会社の「賃上げ」を後押しする「所得拡大促進税制」。数年前に創設され、細かい拡充を経てきましたが、今回公表された平成29年度税制改正大綱で、さらなる拡大が盛り込まれました。
今回の拡大は中小企業限定です。
★最新版⇒社員の給料をアップして節税!(所得拡大促進税制2019年以降改正版)
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現行の適用要件と減税効果
以前の記事にもまとめましたが、現行の適用要件は次の通りです。
1.給与等支給額の合計額が、基準年度(平成24年度)から3%以上増加していること
2.給与等支給額の合計額が、前期以上となること
3.従業員1人あたりの平均支給額が、前期を超えていること
これらの要件を満たすと、給与等の増加額(基準年度から当期の増加額)の10%の金額が、法人税から控除されます。
ただし中小企業が控除できる上限は、当期の法人税額の20%となっています。
拡充ポイント「前期比給与平均2%アップ」
今回の拡充については、上記の要件「3」の平均給与額の増加がポイントです。
この平均給与額が、前期よりも2%以上アップした場合、減税額は次の通り拡大されます。
1.基準年度から当期の給与総額の増加額の10%の金額
2.前期から当期の給与総額の増加額の12%の金額
この1と2の合計額が、法人税から控除されることになります。
(ただし、中小企業で法人税額の20%が上限であることは変わりなし)
ちなみに、平均給与の増加率が0~2%未満の場合、従来通りの計算による減税は維持されています。
実際の効果はどれぐらいか?
具体的ケースで確認してみましょう。
今期は業績好調で、決算前に対策を検討している会社。
当期の法人所得の見込みが1800万円あり、このままでは、法人税だけで約350万円が発生しそうです。
従業員給与の総額の推移は次の通り。
平成24年度 2000万円
前期 2100万円
当期見込み 2200万円
平均給与も2%UPしており、所得拡大促進税制の要件は全て満たしています。
この場合の減税額は、
【従来分】当期2200万-基準年度2000万=増加額200万円
200万円 × 10% =20万円の減税
【拡大分】当期2200万-前期2100万=増加額100万円
100万円 × 12% =12万円の減税
※結果32万円の法人税が減税されます。
これに、地方法人税や住民税も連動し、合わせると総額37万円程度の税負担が軽減されます。
決算賞与で従業員をねぎらう
この税制を利用し、頑張ってくれた従業員に「決算賞与」で報いることも一つの良いアイデアです。
この例で、決算賞与を100万円支給したとします。
①この100万円の増加は、【従来分】にも【拡大分】にも直接反映しますので、
合計22%=22万円。住民税等も合わせると、約26万円の減税になります。
②さらに賞与を支給した分、法人の所得が115万円減少しますので(社会保険料15%も加味)、
実効税率33%とすると、約38万円の節税効果も出ます。
すなわち、決算賞与100万円+社会保険料15万円の支出で、①②合計64万円の節税効果が生まれることになります。
実質半分以下の負担で、従業員にボーナスを支給できるのなら、出してあげたいと思いますよね。
だだしこれを使うためには、相応の利益水準も必要です。
実際には上限である法人税の20%に引っかかってくるケースも多いです。
会社の効率性、生産性を高め、利益が出やすい体質を作り、社員の給与水準も上げていく。こういった取り組みが、いい会社を作っていくポイントの一つだと思います。
※この税制における「給与額」に、役員及びその親族に対するものは含まれませんのでご注意ください。
※今回の内容は全て「中小企業者等」の条件で記載しています。大企業の場合は要件や減税額が大きく異なります。
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