アベノミクスの成長戦略の影響で、政策的な法人税の優遇措置もめまぐるしく変化・拡大しています。
そのうちのひとつ、「所得拡大促進税制」。
従業員の給与を一定以上増額させた場合に、法人税の税額控除が適用できるという制度です。
この制度は、先日お伝えしたとおり、平成25年4月以降開始の事業年度から創設されていたところ、早くも適用範囲の拡充がなされています。
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拡充後の適用要件
その拡充後初めての適用となるのが、平成26年4月決算の法人。
私のお客様でも、ちょうど平成26年4月決算の法人があり、早速適用することができました。
その適用要件は、実際には結構複雑ですので、まとめてみたいと思います。
拡充後の要件は次のとおりです。
1.給与等支給額の総額:基準事業年度から、年度によって2%~5%の増加
(適用1~2年目は2%、3年目は3%、4~5年目は5%)
2.給与等支給額の総額:前事業年度以上
3.平均給与等支給額:前事業年度を上回ること
「給与等支給額の総額」とは?
国内の雇用者に対する給与や賞与で、その年度の損金に算入されるものの合計額です。
パート、アルバイトや日雇い給与などもすべて含みます。
総額が基準であるため、単純に人を増やせば増やすほど、適用が受けやすくなります。
事業を拡大中の法人の場合、受けられる可能性がグッと高まります。
注意したいのは、次の者に対する給与は除かれることです。
・役員、使用人兼務役員
・役員の親族、事実婚、生計の支援を受けているもの
身内に対する給与を恣意的に上げて適用を受ける、といったことはできません。
「平均給与支給額」とは?
この計算が一番やっかいです。
制度拡充後、平均を取る対象者が「継続雇用者」とされました。
これは、適用年度及びその前年度に給与等の支給を受けた国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます。
そしてさらに、対象は「雇用保険の一般被保険者」に対する給与等に限られます。
当期の新規採用者や、前期の退職者等は除かれることになります。
雇用保険に入っていないパート、アルバイトなどは対象外です。
<具体的な判定方法>
雇用保険被保険者に対する支給総額を月ごとに集計します。
対象者の人数も月ごとにカウントします。
1年間の支給総額合計÷1年間の延べ支給人数=平均給与額
これが、前年を超えていればOKです。

基準年度と比べた給与増加額の10%が、法人税から減額できることになります。
控除の上限は、中小法人の場合法人税額の20%です。
今回検討中の法人では、所得が約1200万円程度で、法人税額約240万円。
この20%、約48万円もの税額控除が適用できる見込みです。
この制度、事前の届け出などは一切不要です。
申告時期に適用可否を計算し、該当すればOKです。対象となる法人は結構多いように感じています。
参考記事:中小企業の所得拡大促進税制(賃上げ減税)がさらに拡大~平成29年度税制改正大綱~
★最新版:社員の給料をアップして節税!(所得拡大促進税制2019年以降改正版)
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