平成26年1月から始まるNISA(少額投資非課税制度)。 顧客獲得競争はますます過熱してきています。
現時点の事前予約だけでも150万件。
最終的には1000万件規模の口座開設が見込まれる、との予測も出ています。
これをきっかけにして、多くの人が株式投資を開始することを期待したいものです。
しかしこの制度、単純に「非課税だから大歓迎」と思うといけない注意点があります。
誤解されている声もよく聞きますので、注意点と活用ポイントを少しまとめてみたいと思います。
<既存の証券をNISAの口座に移すことはできない。>
毎年の非課税の枠は100万円。
新規にNISA口座で購入したものだけが対象です。
<非課税枠の繰り越しや復活はない>
1年100万円。
この枠を使い切れなかった場合、翌年に枠が繰り越されることはありません。
また、一度使った枠は、売却しても復活しません。
<通常の課税口座との損益通算ができない>
通常の口座で出た売却益や配当金と、NISA非課税口座で出た損失は、通算することができません。
運用益が非課税の取扱いとなる場合、反対に運用損も切り捨てられるのはしかたがないところです。
<非課税期間が終わった時に含み損がある場合>
ここはとても誤解の多いところです。
非課税期間が終了し、
①通常の課税口座に戻す場合
終了時点にあった含み損は、切り捨てられます。
その時点の時価が取得価額とみなされることとなります。
たとえば、NISAで購入時、株価100万円。
株価は下落を続け、5年後には30万円になっていた。
ここで課税口座へ戻した後、しばらくして株価は反転し、100万円に回復した。
その時課税口座でこの株式を売却すると、利益の計算としては、
100万円-30万円=70万円。
これに税率20%となり、なんと14万円の課税となります。
②NISA口座で継続(ロールオーバー)
再度NISA口座内で継続することができます。
この場合、終了時の時価がたとえば30万円なら、その年の非課税枠を新たに30万円使用することになります。
③売却する場合
売却損は切り捨てとなります。
今のところ、この制度は10年間の措置とされていますが、状況によっては延長となることが想定されています。
延長されている限りは、非課税口座でロールオーバーされるので、含み損切り捨て問題は回避できることになりますが、どうでしょうか。
投資信託の分配金は?
近年長らく、投資信託では分配金が高いもの、毎月分配金がでるもの、が人気となっています。
これをNISA口座で検討する場合、要注意です。
投資信託の分配金には2種類あって、普通分配金と特別分配金。
このうち「特別分配金」は、元本の払い戻しにあたるため、そもそも課税の対象となっていません。
なので、NISA口座で投資していても、メリットは享受できないことになります。
高分配の投信の分配金は、この特別分配金になってしまうことが多いので、不向きだと考えます。
以上のとおり、運用益は非課税だけど運用損は切り捨てられるなど、決してバラ色のような制度とまでは言えません。
ただ、預金に偏った日本の金融資産の少しでも投資に回れば・・・と期待したいです。
自分の大事な資産を守っていくため、これからますます、分散投資の重要性は高まっていきます。