「通勤手当」も社会保険料の対象という矛盾。算定基礎に含めない解釈は可能か?

毎月の給与から天引きされる健康保険料や厚生年金保険料。

これら社会保険料がどのように計算されているか、ご存知ですか?

今回は、算定の対象に「通勤手当」が含まれるという矛盾についてご紹介します。

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負担する金額も年々増額され、現在では報酬の約30%もの社会保険料が課されています。

これを会社側と労働者側が折半することになるため、毎月の給与からは、額面の約15%が天引きされます。

 

経営者の立場でいうと、会社負担分も自己負担と同じようなものですから、30%丸々負担することになるという厳しい現実があります。

 

「所得税・住民税の負担より社会保険料の金額の方がかなり大きい」という方も多いと思います。

 

そんな社会保険料ですが、基本的には年1回、

4月~6月分の月次給与を集計して、その平均額を基準にして算定されます。

 

問題はこの集計です。

通常の基本給はもちろん、通勤手当や住宅手当、残業手当など、名目を問わず、支給されるあらゆる金額を含めることになっています。

 

残業手当や住宅手当などは仕方がないにしても、【所得税でも非課税とされている通勤手当】は報酬と言えるのかな?

そのような疑問がわいてきます。

厚生年金・健康保険における「報酬」の範囲

厚生年金保険法などでは、

賃金、給料、俸給、手当、賞与等名称に関係なく、被保険者が事業主から労働の対償として支払を受けるすべてのものを「報酬」といい、次のいずれかを満たすものとされています。

 

(1)被保険者が自己の労働の対償として受けるものであること

 

(2)事業所から経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計にあてられるもの

この法的要件に当てはめると、通勤手当は、

・通勤費用の実費精算という性質のため、「労働の対償」ではない。

・通常の生計にあてられるものでもない。

「報酬」の要件を満たしていないと解釈するのが自然でしょう。

 

一方、行政の公式な解釈としては、通勤手当は労働の対価であり通常の生計にあてられている、として、「報酬」に含めると明示しています。

通勤費用を「報酬」に含めない取り扱いは可能か?

考えようによっては、法律の解釈問題であるため、会社の解釈方針として「報酬」に含めないという余地もあるのではないでしょうか。

 

例えば「通勤手当」という位置づけではなく、「立替交通費の精算」として給与と同時に振込手続きを行うなど。

 

経費の実費精算であり、労働の対価ではないことを明確にすれば、社会保険料の対象に含めなくても良さそうです。

 

※ちなみに行政の見解でも、例えば「実費弁償的なもので出張旅費・赴任旅費…」は報酬に含まれないという解釈になっています。

通勤費用もかなりこれに近い性質のものと思われます。

 

また、そもそも所得税の取り扱いで、「最も経済的かつ合理的な経路及び方法で通勤した場合」の金額については、非課税の対象となっています。(1か月あたりの限度額15万円)

通勤手当は、従業員の給与ではなく、会社側の経費(旅費交通費)である。という明確な解釈になっています。

 

所得税の基準で給与所得にならないものを、社会保険料の計算では「報酬」に含めている。という矛盾した現状です。

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会社から遠い人・近い人で社会保険料が変わる

同じ会社で同じような業務についている二人の社員。給与はともに30万円。

一人は会社の近くで徒歩通勤のため、通勤手当はゼロ。

もう一人は電車で片道1時間。通勤手当は月に3万円。

 

通勤手当を「報酬」に含めることにより、同額の給与であるはずの二人が、社会保険料は労使合計で月に12,000円も変わってしまいます。

 

毎月の給与手取りも変わりますが、病気やケガによる休業時に受ける「傷病手当金」や、将来受け取る「厚生年金」の金額なども変わってくることになります。

 

 

【まとめ】

・通勤手当は、社会保険料の対象である。というのが公的見解で一般的取り扱い。

・ただし、法解釈に疑問や矛盾がある。

・不条理が嫌い。という場合、自己責任で対抗する余地はありそう。

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