社員の給与アップを後押しするための優遇税制として5年前ぐらいに始まった「所得拡大促進税制」。
その後毎年のように制度が変わってきているため、最新情報のチェックが欠かせません。
節税対策もかなり大きくなる場合がありますので、適用もれのないよう注意していきましょう。
今回は中小企業限定で、2018年4月1日~2021年3月31日の間に開始する事業年度を対象とする最新の制度です。
法人なら2019年3月決算以降、個人事業なら2019年分の申告から適用となります。
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税額控除の適用要件は?
通常の要件をクリアすると15%の税額控除となりますが、さらに厳しい上乗せ要件をクリアすると25%の税額控除が受けられます。
◆通常15%の要件
・「継続雇用者」の平均給与額が前年度比で1.5%以上増加
※「継続雇用者」というのは、前年度の初めから当年度末まで継続してずっと「雇用保険の一般被保険者」であった従業員を指します。
前期から当期の間に中途で入社した人や途中で退職した人はカウントされません。
◆上乗せ25%の要件
・「継続雇用者」の平均給与額が前年度比で2.5%以上増加
かつ、次のいずれかに該当すること
①教育訓練費の額が前年度より10%以上増加
②年度末までに中小企業等経営力強化法に基づく経営力向上計画の認定を受け、経営力向上が確実に行われたことにつき証明がされていること
※「教育訓練費」は、役員やその親族などに対するものは対象外になるので、身内で数字合わせをすることはできません。
また、どういう支出が「教育訓練費」に含まれるかについては、細かい基準が公表されているので確認が必要です。
※一方の「経営力向上計画」については、「経営革新等支援機関」に協力を受けて作成・申請します。対応している税理士も多く、極端に作成が難しい内容という訳でもありません。それでも事前に計画の認定を受け、目標指標をクリアし、決算後にも報告書を提出する必要があるなど、相応の事務負荷がかかる上に適用できるかどうかは不確実です。
税額控除額の計算は?
「給与総額」の前年度からの増加額 × 15%(又は25%)を法人税額から控除します。
(ただし税額控除額はその年の法人税額の20%が上限になります)
「給与総額」というのがポイントで、これは平均給与の判定と違って、雇用保険被保険者など関係なく、パート・アルバイト・中途入退社すべて含めた額です。
そのため、前期よりも従業員が増えた場合などは、その分給与総額も増えるため、受けられる税額控除額も大きくなります。
※この給与総額にも役員やその親族分は含まれないので注意。
新設法人や継続雇用者ゼロは適用できない
以前の制度では、新設法人も適用できていましたが、今回の制度改定で新設法人1年目は適用できないこととなりました。
また上記要件で触れた「継続雇用者」に該当する人がいない場合も、税額控除を受けることはできません。
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黒字見込みの時は「決算賞与」を検討
決算賞与についても平均給与の計算に反映されますので、1.5%の増加要件がクリアしやすくなります。
・800万円以上の黒字見込み
・給与総額は増えている
・平均給与1.5%にギリギリ届いていない
このような条件がそろっていれば、積極的に決算賞与の支給を検討しましょう。
例えば決算賞与を計100万円支給したことで平均1.5%増を何とかクリアしたA社。給与総額の増加額は300万円だった場合の節税効果を試算します。
【支出】決算賞与100万円+社会保険料負担15万円=115万円
【節税効果】実効税率34%の場合の減税効果合計=92万円
※内訳:利益の減少額115万円×34%=39万円、
税額控除額=300万円×15%=45万円+地方税等への減税効果約8万円
なんと、115万円-92万円=実質23万円の負担で100万円のボーナスを支給できる結果になりました。
このように、制度が複雑なうえに毎年のように大幅な改定が入るため、適用もれが心配されるところです。
少なくとも法人税が発生していて、かつ前期よりも給与総額が増えているときは、適用要件を必ずチェックしましょう。
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