役員賞与(事前確定届出給与)で利益調整!に潜む大きなリスクとは?

役員であってもボーナスを出したい!
毎月の給与は変動できないから、利益がたくさん出そうなときに、役員賞与で調整したい!

そんなときに注意したいポイントがあります。

うまくやらないと、やっぱり「経費にならなかった!」なんてことになりかねません。
そして、そもそも役員賞与を利益調整に使えるのでしょうか?

役員賞与を経費にする方法

まず前提として、役員賞与は普通に支給しても全く経費になりません。

やはり「会社=自分」であるような会社では、役員賞与は利益調整に使われやすい面があるため、取り扱いはとても厳しくなっています。

これを経費にするためには、「事前確定届出給与」の届け出というものを出しておく必要があります。

このネーミング通り、
・「事前」⇒株主総会等で支給決定後ひと月以内(又は年度開始4か月の早い方)に、
・「確定」⇒向こう1年間の間に支払う日・支払う金額・支払う役員を、
・「届出」⇒税務署に届け出し、

日付も金額もその届け出通りに支給した場合に限って、経費として認める、という規定になっています。

例えば、3月決算法人で、7月に100万円、12月に100万円支給という届け出を出していたところ、
7月には100万円きっちり支給したが、12月は資金繰りの都合上80万円しか支給しなかった。
という場合、なんと7月の100万円も含めて全額(180万円)が損金不算入!という厳しい結果になるのです。

7月は支給できなかったけど、12月は届け出通り100万円。という場合でも、この100万円は経費になりませんので注意が必要です。

「未払金」処理も認められない可能性あり!
月次の役員報酬の場合、資金繰りの関係で「未払金」としても問題ありませんでしたが、役員賞与は厳しいです。

届け出通り100万円の賞与を未払金として計上していても、現実に支給できていなかったのなら、事前に確定していたとは言えないのではないか。個々に判断していくこととなる。
と、国税庁はこのような解説を行っています。

役員賞与は利益調整に使えるのか?

役員賞与が決算直前の利益調整に使える!という意見もあります。

どういう手法でしょうか?

・3月決算法人が、役員賞与を1回、3月25日に200万円支給する、という事前確定届出給与を届け出ます。

・決算直前になり、利益が多く出ていれば、届け出通り200万円の役員賞与を支給する。

・もし思うように利益が出ていなければ、1円も支給しない。

こうすると、支給する場合は届け出通りなのでOK。
支給しなくても、そもそも0円なので、損金不算入となる金額がなく、実害なし。

このように、実質的に利益調整可能、という解釈もできそうです。

もっと極端なケースだと、家族役員が複数いる場合で、各役員ごとに事前届け出を出しておき、利益額にあわせて、「この人は支給する・この人はしない」と細かく調整するなど。。。

ここまでくると、「危険」という感覚を持ったほうがいいです。

毎年こういう手法を使っている場合、前出の「未払金」の国税庁解説に当てはめると、「事前に支給することが確定していた」と解釈することができなくなるでしょう。
後日、税務調査の際に否認(経費として認められない)されるリスクが出てきます。

そして否認された場合のダメージは非常に大きいです。
200万円の賞与が否認されても、個人の所得税・住民税(社会保険料も!)は戻ってきません。払い損です。
それに加えて200万円にかかる法人税等が課税されるのです。

このようなリスクは絶対に負うべきではない!と私は普段アドバイスしています。

◆税負担的には、利益調整するメリットも少ない
法人税率が低下傾向にあり、個人の税金(主に高所得帯)や社会保険料が上がり続けている中、役員賞与を出して法人税等を減らしても、それ以上の税金と社会保険料が課されます。

特に社会保険料については、会社負担と個人負担合わせて、支給額の約30%!という高額になります。

税務対策を考える際、これを絶対に忘れないように判断する必要があります。

「決算節税対策の裏ワザ」などと勧められるとつい色めき立ってしまいそうな方は、注意が必要です。

得られるメリットが小さい割に、リスクはとても大きいです。
そのリスクは、後になって、税務調査の際に顔を出すことになります。

結論としては、
手続きや管理も煩わしく、利益調整に使うのもリスクが高い。
そのような、役員賞与(事前確定届出給与)はそもそも考えるべきではない!

これが一番すっきりすると思います。

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